コラム
メンタルクリニックが増え、精神科を受診しやすくなったとはいえ、まだ敷居が高いのも事実です。再診したある認知症女性とご主人の診療場面から、プライバシーに抵触しない範囲で、印象に残る出来事を語ります。一般病院から認知症を疑われて紹介されたものの、なぜ精神科に?という戸惑いが強かったことが、初診医のカルテからうかがえました。脳機能検査などを受け、認知症の告知がご主人にされたようです。
その後はかかりつけ医に通院しつつ、訪問看護も利用していました。私の外来を再診されたとき、昔の出来事を思い出してご主人を責め、時に怒って興奮するという心理行動症状で困っておられました。ただし、ご本人にとって昔の記憶はリアル体験で、ふとしたきっかけでためていた憤りや不満が噴出し、他方ご主人も「そんな昔の事いまさら言うな、同じことを何度もしつこい」といった具合で言葉や態度もぎすぎすします。
こうしたやり取りが、二人暮らしゆえにエスカレートしていました。「認知症」という病名や「記憶力低下」といった大まかな告知理解にとどまらず、具体的にどう行動が変化し、生活の中で現れる困難について「心理教育*」することから診療をスタートしました。特に、関わるご家族の理解と対応で患者さん自身の気持ちや表情も穏やかになる、という工夫をケアラーとともに相談することが、とても役立ちました。
現在、ご主人が誰かわからなくなる言動も見られ、寂しさを抱えつつ在宅ケアを継続されています。今後これまでとは違う課題が浮き彫りになるでしょうが、「認知症が進行しても感情は比較的保たれる」という知見も拠り所にして、患者さんとケアラーを支えていきたいと思います。
執筆者 上原徹(高崎健康福祉大学 健康福祉学部 社会福祉学科 教授 精神科医)
著 書 「スキルアップ心理教育」(星和書店)など
脚注*:当事者の心理面に配慮した適切な医療福祉情報の提供・共有と、対処行動の向上を目指した対人的関わりを通じた心理社会サポート(グループワークや家族療法など)で構成されるアプローチ
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